【獣医師監修】トイ・プードル、ポメラニアンなど骨折が完治しにくい犬種も!なかなか治らない愛犬のための骨折治療ガイド

獣医師ライターが、愛犬が骨折してしまった場合の応急処置や病院移送の仕方、骨折治療の内容、手術後の過ごし方や再骨折の予防法まで、詳しく解説♪

また、「愛犬が骨折治療中だが、なかなか完治しない」と悩んでいるオーナーさんのため、完治までの期間の目安や、骨折が完治しにくい犬種とその要因も紹介します。

目次

骨折してしまったら!応急処置と、動物病院までの適切な移送方法

小型犬や超小型は骨が細く、骨折しやすい傾向があります。

  • オーナーさんの抱いている胸元からの落下
  • ソファやベッドからの飛び降り
  • フローリングの床を走っている時の転倒
  • オーナーさんが誤って踏んでしまった

以上のように、些細なことでの骨折も多く報告されています。

適切な応急処置ができれば痛みを軽減&症状の悪化も防げる

万が一、愛犬が骨折してしまったり、その疑いがあって極度に痛がる場合は、適切な応急処置をすることで、骨折部分を安定させて痛みを軽減できます。また、症状の悪化も防ぐことが可能です。

ただ、骨折の激痛から、愛犬が攻撃的になっている場合には、応急処置を無理に行わずに動物病院へ連れて行くことも視野に入れてください。

受診前の愛犬の興奮を少しでも落ち着かせましょう。キャリーケースに入れ、タオルや厚手の毛布などを頭から全身にかけてあげてください。

体の中心から遠い、手足や足先の骨折の場合

手足や足先の骨折の場合には、応急処置として簡易的な添木が有効です。

まず、ボール紙を棒状に折ったものや割り箸などに、脱脂綿やハンカチを巻いてください。

そして、骨折した部位と上下の関節を含めて包帯などで巻き、添木として固定します。

この状態で、愛犬をなるべく動かさないように、動物病院に連れて行きましょう。

骨折を疑う部位が体幹に近く、愛犬が起き上がれる状態の場合

キャリーケースなどに愛犬を入れ、隙間ができないようタオルなどの柔らかいものを詰めましょう。

そうすることで、キャリーケースの中で愛犬が安定し、動くことなく移動することができます。

骨折を疑う部位が体幹に近く、愛犬が動けなくなっている場合

体幹に近い部位が骨折しており、愛犬が動けなくなっている場合には、骨だけでなく内臓にもダメージがある可能性が高いです。

そのような場合には、板などの上にタオルをガムテープで貼り付け、その上に愛犬を乗せ担架(たんか)のように使用しましょう。

動かさないよう最大限に注意を払いながら、動物病院に連れて行くことが大切です。

骨折している確信がなくても、様子がおかしければ動物病院へ!

わんちゃんは痛みに耐えることがあり、症状が現れず、骨折してしまったかどうか不明瞭な場合があります。

わんちゃんによっては、骨折してしまったとしても、何日か経つと足を地面につき始めるケースもあるのです。

しかし、骨が自然にくっついたとしても、本来の正しい位置に骨が安定していなければ、骨が変形する、関節炎を起す、靱帯を傷めるなど、生涯に渡ってリスクを抱えることになります。

そのため、愛犬が高い所から転落したり、フローリングで転倒したりして様子がおかしい場合には、骨折している確信がなくても、必ず動物病院を受診しましょう。

特に、1歳未満の子犬や、トイ・プードル、ポメラニアン、イタリアン・グレイハウンドなど骨折の多い犬種は、受診をオススメします。

骨折治療ガイド:治療から完治まで

愛犬の骨折治療は「手術」となるケースが多い

骨折の治療には、大きく分けて、手術をしないギプス固定と、手術をする方法の2パターンがあります。

現在、最も一般的な手術方法は「骨プレート法」といわれ、骨折部位に金属の板(プレート)を直接あて、ネジで固定する手術です。

また、折れた骨が皮膚の外に飛び出たり、骨折した時に皮膚が破れて、骨が露出したりなど、細菌感染のリスクがある骨折では、「創外固定法」という手術方法が用いられます。

その他にも、様々な手術方法があり、骨折の状態に合わせて、適切な方法がとられます。

骨折で手術が必要となるケースが多い4パターン

わんちゃんは人とは違い、安静にしていることが難しいため、ほとんどの骨折で手術が必要となります。

特に、以下の場合においては、手術が選択されるケースがほとんどです。

  1. 体の中心に近い骨が折れた場合
  2. 骨折した骨の位置が、本来の場所よりかなりずれて変位した場合
  3. 中手骨(前足の甲)や中足骨(後足の甲)の第3指あるいは第4指が折れている場合
  4. 小型犬の橈尺骨骨折(人でいう肘から手首にかけての部分の骨折)の場合

小型犬の骨折 体の中心に近い骨

骨折の完治までは101.3日(約3か月半 )が目安

小型犬 骨折線

骨折が治るという表現は、「骨癒合(こつゆごう)」した時と、「完治」した時の2つの段階に使われるため注意しましょう。

骨癒合(こつゆごう)」とは、レントゲン画像で骨折している線(骨折線)が見えなくなった段階です。

きちんと安静が保てている状態での、骨癒合までの期間は、子犬で3〜6週間、成犬で5〜8週間、高齢犬で7〜12週間といわれています。

骨癒合の段階では、骨同士が繋がっただけで、骨の強度は戻っていないため、まだ安静が必要です。

完治」とは、骨癒合が完了した後に、レントゲン画像で健康な骨と同じ状態に戻り、運動制限が必要なくなった段階のことをいいます。

アイペット損保の保険金請求データの統計によると、骨折したわんちゃんの完治までの平均期間は、101.3日(約3か月半 )ほどです。

しかし、犬種別では、トイ・プードルは119.1日、ヨークシャー・テリアは117.2日、ポメラニアンは113.1日と、平均よりも期間が長い傾向があります。

手術後は安静に過ごす=ケージ内で生活。ポイントは?

骨折前の生活に戻るまでには、最低6週間ほどの安静期間が必要といわれています。

わんちゃんでいう「安静」とは、ケージ内で生活するという意味です。

愛犬が少しでも快適に過ごせるようにしてあげましょう。たとえば、ケージ内に飲水や排泄できる場所や、安心して寝られる場所を整えてあげてください。

もし、トイレが難しい場合には、愛犬用のおむつを履かせて対処しましょう。

エリザベスカラーは、24時間ずっと着けた状態にしておくことが大切です。愛犬が骨折部分を舐めたり、噛んだりする危険性があるためです。

また、愛犬がケージの中で吠えたり、自己アピールをしている時には構わないようにします。静かにしている時にケージから出して、抱いて可愛がってあげるようにしてください。

骨折がなかなか完治しないのはなぜ?

骨折治療中、骨折の治癒が正常に起こらず、骨癒合が不完全なままで止まってしまうことがまれにあります。

これは、「骨癒合不全(こつゆごうふぜん)」といわれる状態です。

骨癒合不全になってしまった場合には、要因(不適切な治療や管理、感染、基礎疾患)を取り除いた上で、再手術を行い、経過をみていくケースが一般的で、治療が長引いてしまいます。

骨癒合不全が起きやすい犬種もいる

東京動物整形外科病院(※1)の解説によると、わんちゃん、猫ちゃんにおける癒合不全の発生率は、骨折治療をした全体の3.4%と報告されているとのこと。

癒合不全は、特にトイ種やミニチュア種などの小型犬の骨折で多いとされています。

実際、東京動物整形外科病院が他病院から紹介を受けて癒合不全の治療をするのは、プードル、ヨークシャテリア、ポメラニアンが多い印象とのことです。

※1 東京動物整形外科病院は、動物の整形外科に特化しており、年間600例近くの手術を行う。そのほとんどが他の動物病院から紹介を受けてのものという専門病院

これら小型犬では、骨の周囲に筋肉などの組織が少ないため、外側から骨へ供給される血液量が少なく、癒合不全が起きやすいと考えられています。

骨折がなかなか完治しない理由1:治療が難しい(専門医の受診を推奨)

骨癒合不全は様々な要因で発生します。最も多い原因としては、骨折治療や、治療後の管理が適切に行われなかったことが挙げられます。

骨折治療を目的とした手術は、折れた骨をただくっつけるだけではありません。

骨折手術は難しく、骨折した部分を元通りに整復してから固定し、骨をくっつけ(骨癒合)、骨を元の形に戻す繊細な手術です。

骨折した部分を元通りに整復して固定しないと、骨折した部分が変位してくっつなど「骨変形」を引き起こしてしまいます。

骨変形が生じると、骨折した骨の上下の関節に悪影響を引き起こしてしまい、元通りの生活を取り戻すのが難しくなります。

また、骨折手術では、修復した部分に小さな変化を起こさせないために、強固な固定が必要です。しかし、小型犬の場合は固定が強すぎると骨が萎縮してしまいます。逆に、弱すぎると修復した部分が破綻してしまいます。

かなり難しい手術となりますので、骨折治療を目的とした手術の際には、正確な知識を持った、経験のある獣医師に、適切な手術を行ってもらいましょう。

骨折がなかなか完治しない理由2:安静にできていない

獣医師が適切な治療をしているのに、なかなか愛犬の骨折が完治しない場合は、必要な期間、しっかりと安静にできていないのが理由である可能性があります。

骨折手術後、愛犬がケージの中にずっといることを可哀想に感じると思います。しかし、安静期間を短くするためにも、獣医師により安静を指⽰された期間中は、極力ケージから出さないようにしましょう。

骨癒合不全の要因には、それ以外にも感染や基礎疾患などがあります。

再骨折は防ぎたい!4つの骨折原因と予防方法

落下防止:正しい抱っこの仕方をする

愛犬はしゃがんだ状態で抱き上げます。そして、画像のように、愛犬とオーナーさんの体をピッタリとくっつけ、愛犬の体が安定するように抱っこをしましょう。

もし、抱いている愛犬が暴れてしまった時には、オーナーさんがすぐにしゃがむことで、高いところからの落下を防ぐことが出来ます。

転倒防止:家の環境を整える

フローリングには、滑り止めのマットを敷いて滑らないようにします。また、愛犬の足裏の毛も、滑る原因になるので、こまめに切るようにしましょう。

また、ソファやベッドを低いものに変えたり、段差には愛犬用のスロープ(階段)を付けたりするのもオススメです。

愛犬がどうしても高い所に登ってしまう時には、着地点にクッションなど柔らかいものを敷くことで、四肢への衝撃をやわらげてくれます。

体を丈夫に:適切な量のお散歩&日光浴をする

愛犬に筋肉をつけるためや、太陽の光を浴びさせるために、必要な運動量に合わせてお散歩をするようにしましょう。

太陽の光を浴びると、骨を丈夫にするビタミンDが体内で生成されることに繋がるため、適度な日光浴も骨折予防には効果的です。

危険行動防止:「ダメ」や「マテ」のトレーニングをする

愛犬が高い所に登ったり、高い所からジャンプしたりしないように、しつけ・トレーニングをしましょう。

オーナーさんの「ダメ」や「マテ」で高い所に登るのをやめさせたり、ジャンプすることをやめたりするよう教えることは、骨折を予防するためにとても大切です。

きちんと安静にして治療期間を短く!

愛犬が万が一骨折してしまった場合の骨折治療ガイドをお届けしました。愛犬が骨折が治りにくい犬種の場合には、細心の注意を払いましょう。

また、骨折の手術後は、愛犬がケージの中にずっといることを可哀想に感じるオーナーさんが沢山いらっしゃると思います。

そのような時には、きちんと安静にすれば、治療期間が短くなって、ケージ生活が早く終わるとポジティブにとらえるようにしましょう。

この記事が、愛犬とオーナーさんの暮らしにお役に立てると幸いです。

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