新型コロナウイルスが毎日のようにニュースになっており、ワクチンの副反応(副作用)について取り上げているニュースもあるかと思います。
大切な家族の一員である愛犬を感染症から守るため、ワクチン接種を行うことはオーナーさんの責任です。
しかし、そのようなニュースを目にすると、特に体が小さいチワワやトイ・プードルなどプティシアンのオーナーさんのなかには、ワクチンの副反応が不安になったり、ワクチンを極力打ちたくないと考える方もいらっしゃるのではないでしょうか?
最近では、「3年に1回」のワクチン接種プログラム(ワクチンの接種時期・間隔)を取り入れている動物病院も国内で増えてきています。
混合ワクチンの基本情報と選び方
混合ワクチンの種類と予防できる感染症
混合ワクチンは、入っているウイルスや菌の種類によって2種~10種まであります。
なかでも、動物病院で多く用いられている混合ワクチンは以下のものです。
5種 犬ジステンパーウイルス感染症+犬パルボウイルス感染症+犬伝染性肝 炎(犬アデノウイルス1型感染症)+犬アデノウイルス2型感染症+犬パラインフルエンザ感染症
6種 5種 +犬コロナウイルス感染症
7種 5種 +犬レプトスピラ感染症2種
8種 5種 +犬コロナウイルス感染症+犬レプトスピラ感染症2種
世界小動物獣医師会(WSAVA)により、これらのワクチンは、コアワクチン(核になるワクチン)とノンコアワクチンに分類されています。
コアワクチンとは、感染力が強く致死性の高いウイルスに対応するもので、生活環境にかかわらず、全ての動物に必要とされるワクチンです。
コアワクチンには、犬ジステンパーウイルス、犬アデノウイルスおよび犬パルボウイルスの感染を予防するものが分類されています。
一方、ノンコアワクチンは居住地の条件によって感染のリスクが異なるため、生活環境や飼い主のライフスタイルなどに応じて接種の要否を判断するべきワクチンです。
ノンコアワクチンには、犬パラインフルエンザウイルス、犬レプトスピラ症の感染を予防するものが分類されています。
また、犬コロナウイルスワクチンは推奨ワクチンに分類されており、推奨ワクチンとはそのワクチンの使用を正当化する科学的根拠に乏しいものを指します。
どの混合ワクチンを選べば良いのか
混合ワクチンを選ぶ際に特に大切なことは、ノンコアワクチンである犬レプトスピラ感染症を予防する必要があるかどうかです。
犬レプトスピラは、感染しているネズミなど野生動物の尿中に排泄され、水や土壌を汚染します。
そして、その水や土壌に接触すると、皮膚、口や目の粘膜から感染する病気です。
ですので、そのような野生動物が生息する地域に住んでいる場合や、山や川などのアウトドアに遊びに行く場合には、犬レプトスピラ感染症が予防できるワクチン(7種か8種)を接種し、そうでない犬は5種か6種を接種することが推奨されます。
混合ワクチンによる副反応と予防法について
混合ワクチンによる副反応とは
打ってから数時間後に比較的よくみられるワクチンの副反応としては、顔の腫れや痒みなどです。
この副反応は、命に関わることはほぼないですが、パグなどの短頭種では呼吸困難を起こして危険な状態になることが稀にあります。
また、ワクチンが起因しているのかは不明ですが、接種後によくみられる症状として、嘔吐や下痢、食欲低下、元気消失、接種部位の痛みや腫れなどがみられます。
このような症状がみられた場合には、すぐに動物病院に連絡をするようにしましょう。
特に、ワクチン接種の副反応で一番気を付けなければいけないのは、重篤なアレルギー反応です。
ワクチンを打ってから1時間以内に、ぐったりする、口などの粘膜の色が真っ白になる、吐くなど「アナフィラキシーショック」といわれるショック状態に陥ることがあります。
アナフィラキシーショックは放置すると命に関わることがあるため、すぐに動物病院に連れていきましょう。
混合ワクチンの副反応を起こさないために飼い主ができること
副反応が出ないよう、混合ワクチンは愛犬の体調の良い日に接種し、接種後の数日間は激しい運動やシャンプーは控えるようにしましょう。
また、副反応が出たらすぐに動物病院に行けるよう、午前中にワクチン接種を受けるようにしてください。
特に、接種から数時間は副反応が出やすいため、愛犬の様子をよく観察し、気になることがあればすぐに動物病院に連絡しましょう。
世界的に推奨されている「3年に1回」のワクチン接種プログラムとそのメリット
「3年に1回」のワクチン接種プログラムの概要
国内では1年に1回のワクチン接種を推奨している動物病院が多いですが、世界的には「主要な3種のワクチンの再接種は3年以上の間隔をあける」という考えが一般的とされています。
これは、世界小動物獣医師会(WSAVA)による世界的なガイドラインに基づく接種プログラムで、主要な3種とは、前述した3種のコアワクチンのことです。
これらコアワクチンは3年間隔でも十分な予防効果が報告されており、それ以上の(3年間隔より短い間隔で)接種することは推奨しないそうです。
一方、ノンコアワクチンについては毎年の接種が推奨されています。
ただ、ノンコアワクチンである犬パラインフルエンザウイルス単独のワクチンは販売されておらず、5種ワクチンを接種することになります。
犬パラインフルエンザウイルスは、ケンネルコフという犬風邪の原因の一つであり、ドッグランやペットホテルなど不特定多数の犬と長い時間接触する場合には予防が必要です。
そのため、他の犬に接する機会の少ない犬は、3年毎に5種か6種ワクチンを接種すれば十分ですが、他の犬に接する機会の多い犬では、犬パラインフルエンザウイルス感染を予防するために5種か6種ワクチンを毎年接種する必要があります。
一方、同じノンコアワクチンである犬レプトスピラのワクチンは単独での接種が可能です。
そのため、やや複雑にはなりますが、他の犬と接する機会が少ない犬では7種あるいは8種ワクチンを3年毎に接種し、その間の2年間は犬レプトスピラ単独のワクチンを接種するという方法をとることも可能ですので、獣医師に相談してみましょう。
●頻繁にドッグラン、ペットホテルを利用する→5種あるいは6種ワクチンを毎年接種
●ペットホテルやペット可の宿泊施設をたまに利用する→ 5種あるいは6種ワクチンの3年毎の接種に加え、施設を利用する前にワクチンを接種
●野生動物が生息する地域に住んでいるあるいは、アウトドアに遊びに行くことが多い→犬レプトスピラ症を予防できるワクチン(7種や8種)ワクチンを3年毎に接種し、その間の2年間は犬レプトスピラ単独のワクチンを接種する
「3年に1回」のワクチン接種プログラムにするメリット
一つ目のメリットは、ワクチン接種プログラムを「3年に1回」にすることにより、必要最低限のワクチン接種ですませることができ、愛犬の体への負担が減ることです。
さらに、「3年に1回」のワクチン接種に加え、ワクチン接種年でない年に抗体検査を行うことで、より安心してワクチン接種の回数を抑えることができます。
抗体検査とは、犬の体内にワクチン接種によって作られた抗体が残っているかどうかを調べる検査です。
抗体が残っているということは、そのウイルスや菌に対する免疫が維持されていることを意味し、ワクチン接種は不要になります。
他の犬に接する機会が少なく、3年に1回のコアワクチンの接種だけで十分な犬であれば、ワクチン接種年でない年には抗体検査を行い、3種のコアワクチンのうちいずれかの抗体が十分でなかった場合にのみ、ワクチン接種を行うとより安心です。
ただ、安田獣医科医院の報告によると、過去6年間、毎年約1千件の抗体検査を行ってきて、抗体が不十分な事例は年数件にとどまったそうです。
抗体検査について
抗体検査とは、犬の体内にワクチン接種によって作られた抗体が残っているかどうかを調べる検査です。
抗体が残っているということは、そのウイルスや菌に対する免疫が維持されていることを意味し、ワクチン接種は不要になります。
キットを用意している動物病院であれば、採血後、早ければ30分程度で検査結果がわかります。
検査費用については動物病院によって様々ですが、一般的に1回あたり8千円前後で、混合ワクチンを接種した場合と料金はあまり変わりません。
抗体検査の際には「ワクチン接種証明書」のように「抗体検査証明書」を発行してもらうことができます。
「3年に1回」の接種プログラムに変更する際に気を付けるべき点
国内では、多くの動物病院が毎年のワクチン接種を推奨しています。
この影響から、トリミングサロン、ドッグラン、ペットホテル、ペット可の宿泊施設などでは、犬を受け入れるにあたり、「1年以内の混合ワクチン接種証明書」の提示を求められることが一般的です。
ペットホテルやペット可の宿泊施設は毎年利用するわけではないため、「3年に1回」のワクチン接種の年でなくても、施設を利用する前にワクチンを接種することで対応が可能です。
トリミングサロンやドッグランは毎年利用する施設のため、「抗体検査証明」を提示することで利用可能か施設に問い合わせたり、利用可能な施設を探しておきましょう。
最後に
「3年に1回」のワクチン接種を行っている動物病院を探す場合には、動物病院のHPに記載されていることが多いため、HPを検索してみてください。
また、毎年のワクチン接種を推奨している動物病院でも、抗体検査で抗体の有無を調べてからの接種に対応している場合があるため問い合わせてみましょう。